TIM HECKER : Haunt Me, Haunt Me Do It Again

冬の青空を眺めているような望郷の世界観を有するこの一作は Tim Hecker の中でも最も穏やかで感傷的な作品である。トラックは全20曲であるが実際には8曲が切れ目無く流れてゆくという構成で、ゆったりとした時間とともに澄んだ風のように流れてゆくような展開。繊細なメロディは吹きつける風のようなドローンにもはやかき消される寸前で儚くもその美しさは印象深く際立っているのである。ラストのクライマックス「night flight to your heart」といい、そこまでの持っていき方といい実に素晴らしく、数年に一度しか使えない「数年に一度のアンビエントの傑作」という賛辞の表現を用いるにふさわしい一作だろう。